呼隠撰(Co-Onsen)

Japanese-style inn and hot-spring in Yugawara

湯河原にひっそりと佇む古民家のコンバージョン。

築70年以上の古民家を、隠れ家的な温泉旅館へと再生しました。

蔦が生い茂る石積み擁壁に沿ってアプローチを進み門をくぐると、立派な日本庭園が迎えてくれます。

庭園の奥に佇む平屋の家屋は、広間から庭園を望み、寝室と浴室からはそれぞれ異なる2つの中庭を望むように配置されています。

敷地を初めて訪れた際に、建築よりも庭が主役であることは一目瞭然でした。

家屋に対して私たちがしたことは、傷んでいる部分を直し、旅館として快適に過ごせるように整理しただけですが、それよりも、素晴らしい庭園とのつながりをもっと強め、この施設(家屋と庭園)の持つ潜在力を引き出すことに力を注ぎました。

まず、型ガラスの多かった窓ガラスを透明にして建物の中から庭を眺められるようにしました。簡単な操作ですが、視覚的に内外が繋がり、中に居ながら庭を感じることができるようになりました。

次に、建物から庭に突き出す仕掛けとして、縁台や露天風呂を設けました。

家屋の中から眺めるだけでなく、外に出て、庭と結びつく居場所となりました。

更には、家屋から離れた庭の中に四阿(あずまや)を設けました。四阿はそれ自体庭の景観の一部にもなり、庭を母家と離れた場所から違う視点で眺めることができる居場所にもなります。

古民家は、時代を超えている存在であり、そこに居るだけで、今過ごしている時間軸とは異なる時間軸を感じることができます。

庭園は、造園家の田瀬さんの手により生まれ変わり、地域に在来の植物を生かしながら庭を美しく維持する選択除草の体験もできます。

古民家の持つ時間軸と、季節により変化する庭園の美しい景観や自然(この場所に生える地域在来の植物、植樹された樹々に咲く花、住み着いている昆虫や両生類、来訪する鳥や動物)という非日常に触れて過ごす体験は、新しいツーリズムとして一石を投じるのではないかと考えています。

 

 

造園設計:プランタゴ

建築施工:加藤忠男

造園施工:富士植木

所在地
静岡県熱海市
主要用途
温泉旅館
敷地面積
1811.17m2
建築面積
157.48m2
延床面積
157.48m2
構造規模
木造平屋 2棟(母屋 124.02 ㎡、はなれ 33.48㎡)